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平成13年度 
日本子ども版画の会指導者賞受賞発表要項
 

 表現する楽しさや喜びを味わう切り紙版画
〜総合的学習との関連から導入し、ステンシル版画へ発展していった取り組み 〜
                    
  Saibi−Kan
                   


わっしょい!わっしょい!(平12年度Y小児童作品)

1 はじめに


 わたしは、教職に就いてからの長い間、 図工や版画教育については深く実践していませんでした。前任校(城山小)に赴任したころから、少しずつ版画への興味は湧いてきました。それでも 校内の図工担当の先生に聞きながら、独学で、なんとかいい作品が仕上がるようにと取り組 む程度でした。当時は高学年の担任をすることが多く 、毎年、白黒の木版画を行っていました。子どもたちと一緒に、それなりに楽しく版画の学習をやってはいたの
ですが、一人で 指導していく限界みたいなものを感じ始めていました。

 そして、4年前に現在の弓削小学校に異動しました。そ の年の夏に、ひょんなことから図工サークルに入会し、その後、県の版画の会に参加するようになりました。それから、会長の坂田先生をはじめ多くの先生方のお話や実践発表・実技指導が、わたしにとってはすばらしい「学びの場」でした。
 カッター1本でも楽しい版画ができることも知り、八代の成田先生に指導法やポイントを教わりに一日出かけました。自校に帰って4年生の子どもたちとともに切り紙版画に初挑戦し、できあがった作品を県版画の会に持ち込みました。そこでは、岩木先生をはじめ何名もの先生方から、とても貴重なアドバイスをいただきました。
 その後、その子どもたちを5年生・6年生と持ち上がり(クラス替えのために半分ですが)、2年ぶりに切り紙版画に挑戦することにしました。夏にはこの日本子どもの版画の会にも初めて参加させていただき、多くのことを学びました。わたしの版画教育は、まだまだ実践を始めたばかりです。正直言って、最初、わたしのようなものが指導者賞をいただいていいのだろうか、と戸惑いました。しかし、今は多くの先生方や子どもたちに、感謝の気持ちでいっぱいです。この発表をすることで、お世話になったみなさんに恩返しができればと思います。

2 切り紙版画「弓削とわたし」の実践(平成12年度)
(1)ねらい   
@自分の思いを豊かに表現し、表現する喜びを味わう。
A版画のいろんな技法を身につけ、版画に表す楽しさを味わう。
B自分と地域の関わりに気づき、自分の住む地域のよさを見つ け、ふるさとを大切にしていく子どもに育てる。 

(2)方法  
@総合的学習と関連した図工科の学習を行う。
A子どもが、楽しく進んで学習を進められるように支援環境を工夫する。
B白黒の切り紙版画を作成し、その版を生かしたステンシル版に応用する。

(3)実践
@ 総合と関連した学習の導入と題材発見(9月)
6年の総合的学習単元「過去から未来へ続くメッセージ〜ふるさとの文化と伝統のすばらしさ〜」の導入で、弓削校区の1町内行事として弓削神宮で行われている「願解すもう」という行事の映像を見せた。(すもうを当日取材にいって、ビデオに撮ったものである。6年生の子どもたちも多数参加していたので、みんなに大うけだった)その時の授業で神宮の総代を務める地域の方にも教室に来ていただき、話もしてもらった。かなり昔から続いている伝統行事と言うことに子どもたちは驚いていた。その学習をした後に、図工での「弓削とわたし」の導入を行った。
 6年の総合的学習単元「過去から未来へ続くメッセージ〜ふるさとの文化と伝統のすばらしさ〜」の導入で、弓削校区の1町内行事として弓削神宮で行われている「願解すもう」という行事の映像を見せた。(すもうを当日取材にいって、ビデオに撮ったものである。6年生の子どもたちも多数参加していたので、みんなに大うけだった)その時の授業で神宮の総代を務める地域の方にも教室に来ていただき、話もしてもらった。かなり昔から続いている伝統行事と言うことに子どもたちは驚いていた。その学習をした後に、図工での「弓削わたし」の導入を行った。
  「願解すもうの他にも、わたしたちの弓削にはいろんないいものがあるよね。」と問いかけると、他の地域行事や弓削の特色がいくつも出てきた。その話し合いの中で、自分が関わった弓削のよさや、自分が見つけた弓削のよさ、遊びで感じた弓削のよさなどを、みんなで出し合い話し合った。そして、それらの中から、自分が表現してみたい題材を選んでいった。それら以外からも、自分で、弓削と自分が関わる題材を見つけた子もいた。
                                                                   
A 切り紙版画の手順(下書き・白黒分け・転写・切り・ニスぬり・刷り)表や資料の掲示
 切り紙版画の基礎基本を身につけること、子どもが自主的に学習を進められるようになることなどをめざして、自作の掲示資料を作成した。例として使用した版画は、同級生の4年生の時の作品である。授業ごとに掲示板に説明部分を貼りながら学習を進めていく。遅れている子も、あとで、それを見ながら作業を進めることができる。( *具体的な手順は、実技研修のページを見てください)
また、自分たちが4年生の時の切り紙版画作品、他の小学校の高学年児童の切り紙版画作品、ふるさと熊本のよき風景を切り 絵で表してある美術家の作品を掲示しておく。

B 完成の感動を親にもお知らせ(10月完成)
 子どもたちが楽しみながら作品づくりをしている様子や、みんなで協力してインク付けやプレス機を回しているところ、刷り上がって感動した瞬間などを、学級通信で知らせていった。

      
C 多色のステンシル版画への応用(3学期実施)
  白黒版画の時の版を利用して、同じ作品でカラー版画(ステンシル)を作った。白黒作品では、ぱっとしなかったのに、多色で生き生きとした作品もあった(逆もあり)。  

D 卒業記念カレンダー制作                     
 ステンシルでできあがった版画をデジカメで取り込んで縮小印刷した。文字(月・日・曜・タイトルなど)は、消しゴムで作った版。卒業生個人と、学校に数点記念として残した。子どもたちはもちろん、親の方や先生方からもたいへん喜ばれた品となった。



3 おわりに
  平成10〜12年の3年間は、自分にとって、とても心に残る、いろんな出会いのあった3年間でした。切り紙版画との出会い、版画の会の先生方(県・全国ともに)との出会い、そして、ずっと持ち上がって担任した子どもたち。特に今回の子どもたちとの授業は、自分自身がとても楽しく学べたという気がしています。版 画の学習をしながら、子どもがいろんな発想をしたり、感動をする場面に出会いました。また、総合的な学習の時だけでなく、図工の時間にも自分の地域のよさに目を向け、弓削を大切にしていきたいという気持ちが高まっていました。
 4年生で切り紙版、5年生で木版、6年生で切り紙版とステンシルといった様々な方法で取り組みましたが、それぞれの場でよさを発揮する子がおり、子どもの個性というものを垣間見た気もしました。今年は3年ぶりにまた4年生を担任しています。夏のこの大会でまた何かを学んで、それを新しい子どもたちにかえしていきたいな、と思っています。

             
   平成13年8月 
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